クリスマスは、ファイナル・ファルマコン2022‼️

「ファルマコン2022 新生への捧げもの」オンラインレクチャー最終回のお知らせ!

お待たせいたしました。長らく延期していた展覧会「ファルマコン:新生への捧げもの」オンラインレクチャーシリーズの最終回を12月23日お昼よりzoom配信いたします。奮ってご参加ください。

クリスマスはファイナル・ファルマコン2022

2022年も暮れとなりました。2022年5月28日から6月19日、京都のThe Terminal KYOTOにて開催された展覧会「ファルマコン:新生への捧げもの」を盛り上げるため5月から出展作家の皆様にご出演いただきつつ展覧会最終日まで続けてきたオンラインレクチャーシリーズ(Youtubeチャンネル「展覧会ファルマコン」)全8回。当初は展覧会終了後の7月に予定していた最終回(第9回)でしたが、未開催のまま年の瀬になってしまいました。
ついに決まりました、ファルマコン2022のファイナル・レクチャー詳細は…

日時:2022年12月23日12:00-13:30(ZOOM配信)
出演:吉岡洋(アドバイザ), 大久保美紀(キュレータ)
テーマ:総括 「新生へのアートプラクティス」
参加URL:https://us06web.zoom.us/j/81816197976?pwd=bHljSzNpS3dNank1bVo2TmRSSEhVUT09
ミーティングID: 818 1619 7976 パスコード: 54B7G3

総括回の聞きどころ
パンデミック、ウイルス、マスク、ワクチンといった話題は人々を痛々しい仕方で分断させている。それらに関する意見や方針の違いによって、それまで仲の良かった友人や家族、親戚などの間に亀裂が生じてしまった例も少なくない。そうした事態を避けようとすれば、これらの話題をタブーをしなければならないが、それもまた抑圧的な状況である。現代社会を最も深刻に毀損しているのは、こうした亀裂と分断へと誘導する力である。この力に抵抗する希望が、本展覧会のテーマである「新生」という語に託されたひとつの意味であった。
オンライン・レクチャー総括回では、そうした希望を新しいエコロジカルな世界観を語ることの中に求めたい。それは宇宙の中での人間の位置について、新しい理解へと到達する試みである。人間中心主義もちろん、動物中心の生命観をも捨て去って、植物や微生物に定位した生命理解の可能性について考える。エマヌエーレ・コッチャの「植物の生の哲学」や、単に「東洋的」というステレオタイプでは捉えきれない道教の生命観にも言及しつつ、バイオテクノロジーや人工知能によって変貌するこの世界における、新たな生のあり方を探ってみたい。

展覧会「ファルマコン:新生への捧げもの」について
本展覧会は、パンデミックに翻弄され日常を犠牲にしてきた世界が、ウイルスという不可視の敵の撲滅という大義名分のもと、他者を警戒し合い、経済格差が拡大され、現世への執着のあまりに死者への配慮を失ってきた状況を危機的に捉える。〈薬〉と〈毒〉同時に意味する「ファルマコン」は世界の本質を両義性に見出した。この概念を鍵に、過去と未来・この世とあの世をつなぐものとしての芸術表現を模索し、「新生」への捧げものを行う異なるアプローチ(8組11名のアーティスト)がThe Terminal KYOTO(京都)に集った。

これまでのレクチャーはこちら
→ Youtubeチャンネル「展覧会ファルマコン」https://www.youtube.com/@user-mw5vt7zy3n/videos

NEW! オンラインレクチャー総括回をアップしました!
https://youtu.be/EdeQ9p9s6-U


ファイナルファルマコン2022_compressed

florian gadenne/フロリアン・ガデン, drawing “oe” について 2

oe について 2

作品oe dans l’oのロゴといったらいいだろうか、サインというべきだろうか。このシンプルでありながら多義的な記号はoe dans l’oの表すものをとても単純にしえている。ドローイングの複雑さに対して、この記号の簡潔さは面白いほどである。

まず、oe (dans l’o)というタイトルについて、ガデンのプロジェクト説明の記述の助けを借りて、読み解いてみよう。oe は二つのアルファベットから構成され、フランス語では日本語の母音「う」の舌の位置をキープしたまま「う」と「え」の間くらいの口のすぼめ具合で発音してみるといい感じのoeの音が出る。この母音は、合字の母音で、フランス語では古代ギリシャからの借用語に使われて来た。そう知って探してみるとどの単語が古代ギリシャ語からの借用語かわかって面白い。ガデンの説明に沿って例をあげてみると、例えば:

œcuménique »:全世界的な、普遍的な。インド・ヨーロッパ語やサンスクリット語における家族や家に相当し、ギリシャ語においては遺伝的に結ばれる部族と関係がある。

œil” :目、視覚器官。目のような形をしたあらゆるもの、たとえば動物の毛皮にある目玉のような模様や、孔雀の羽の模様、蕾や芽。

œuf” :卵、卵子。

œuvre” :作品。女性名詞として、具体的に行われた仕事(ergon)。錬金術の分野で男性名詞として用いられ、卑金属を金に完全変換する、あるいは賢者の石を想像する「大作業」を意味する。

fœtus” :胎児、出産、新生児、世代。ちなみにfeはインド・ヨーロッパ語で「乳を飲む」ことに関係がある。たとえば、fécond(多産), femme(女)に共通。

さて、oe (dans l’o)は、その構造の頂点に一つの卵子を持つ巨大で複雑な建造物である。卵子を取り巻くのは8つの精細胞で、それらは卵細胞から遠のくにしたがって次第にDNAの二重螺旋構造として翻訳される。錬金術において卵は宇宙の創造を象徴すると同時に金属の変質を意味する。<世界の卵>(oeuf du monde)、すなわちあらゆるものの起源はエジプト神話を含め世界の数多くの神話に登場する。

卵(oeuf) は成長して胎児(Foetus)となる。ドローイングoeの記号には明確に胎児(foetus)が据えられている。 またドローイングの頂点は、生命の起源としての<卵>(錬金術における世界の卵とも卵子とも取れる構造)が君臨している。(写真)

Pharmakon II/展覧会ファルマコンII いよいよラスト3日となりました!

皆様、いよいよラスト三日となりました、展覧会「ファルマコンII アート×毒×身体の不協的調和」@想念庵(京都市左京区田中里の前町49−2)
本日も作家在廊(大久保、フロリアン・ガデン)で19時まで開館しています。明日、明後日も11時−19時(13−14時を除く)皆様のお越しをお待ちしています。
公開制作の「バベルの塔的細胞3」インタラクションゾーンを超えて、地獄ゾーン入り、目が離せません。パンも随時増えています。どうか、足をお運びいただけましたら幸甚です。

クロージングの25日の午後は皆様にこれまで面倒を見ていただいた酵母を元にパンを焼いて試食します。お誘い合わせの上ぜひ、いらっしゃってください。

Last three days of our exhibition “Pharmakon II” @Sonen-an, Kyoto.
Please come to see us! The last day, Nov 25th in the afternoon, you will taste natural yeast breads (cultivated during the exhibition). Please join us.

展覧会「ファルマコン」/ Expo Pharmakon

展覧会:「ファルマコン:医療とエコロジーのアートによる芸術的感化」
Pharmakon: Medical-ecological approaches for artistic sensibilization

企画:大久保美紀
共催:特定非営利活動法人キャズ
協力:The Terminal Kyoto、京都大学こころの未来研究センター
助成:ポーラ美術振興財団、朝日新聞文化財団

会場・日時:
ターミナル京都(2017年12月1日~23日): 〒600‐8445京都府京都市下京区新町通仏光寺下ル岩戸山町424
CAS(2017年12月2日~23日): 〒556-0016 大阪府大阪市浪速区浪速区元町1丁目2番25号 A.I.R. 1963 3階

オープニング・レセプション
京都会場・大阪会場におきまして、各オープニングの日、アーティストを交えてレセプションを行ないます。フランスから参加のアーティスト達にとっては初めての日本での展示となります。ぜひお越し下さい。
京都会場:2017/12/1  ターミナル京都 18時~21時 参加無料
大阪会場:2017/12/2  CAS 16時~ 参加500円(16時からアーティストトーク、終了後レセプションを行います)

キュレーション:大久保美紀
アーティスト:Evor, florian gadenne, Anne-Sophie Yacono, Jérémy Segard, 石井友人, 犬丸暁, 大久保美紀, 田中美帆, 堀園実

<展覧会について>
展覧会「ファルマコン:医療とエコロジーアートによる芸術的感化」(Pharmakon : Medical and ecological approaches for artistic sensibilization )は、フランスより5名のアーティストを招き、日本で活躍する3名のアーティストとキュレータ自身を含める9名の作家からなる現代アートのグループ展です。本展覧会は、ターミナル京都(12月1日オープニング)、および特定非営利活動法人キャズ(CAS、12月2日オープニング)にて12月23日まで開催いたします。

本展覧会「ファルマコン」は、今日の芸術表現が有用性や存在意義を厳しく求められている社会的状況の中で、アートという手段によってこそ実現することのできる社会問題・環境問題への対峙と、芸術表現を通じて他領域への問題提起すること、その意識化の可能性を模索することをめざしています。とりわけ、自然環境と人間の営みの相互的関係や、自然の一部としての人間にとっての先端医療や科学技術の持つべき意味について、芸術的アプローチを介して丁寧に見つめ直すための新しいパースペクティブを提案したいと考えます。

薬理学の語源であるギリシャ語ファルマコン(Pharmakon=φάρμακον, Greek)は、「薬」=「毒」の両面的意味を併せ持つ興味深い概念です。本展覧会のタイトルとしての「ファルマコン」は、治療薬やドラッグ(remèdes, drogues)を意味すると同時に、染色剤や化粧品などの毒性のあるもの(poisons)を意味するこの言葉の語源に沿って、病が肉体に定着する以前に行なわれる不適切な行為(投薬など)が却って状況を悪化させる可能性を喚起しながら、身体の自然治癒能力と環境へのコミットメントのあり方を巡り、身体のより健全な生き方について考えるようわたしたちを導いてくれるでしょう。さらには、芸術表現は、特定のメッセージとして放たれ、個人や共同体や社会に深く享受されたとき、それがひょっとしてある既存の体制にとってラディカルなものであったとしても、将来の生活や環境に現在のあり方を改善し、それをより好ましい傾向へ向かわせるものとして、つまり「毒=薬」としてふるまうことに着目します。

本展覧会が、芸術領域、専門領域、鑑賞体験という個別のフィールドを超え、それぞれを有機的に結びつけながらダイナミックな対話を生み出す「感化的芸術」(Artistic sensibilization)の機会となるよう願っています。