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展覧会「ファルマコン」は、これまで共通するメンバーで研究・実践してきたプロジェクトや展覧会、執筆活動の問題意識とテーマを引き継ぎ、発展させる形で、展覧会に参加してくれるアーティストメンバーを加え実現しました。
(本文内で紹介の作品・展覧会・サイトは記事最後のリンクからご覧ください)

ファルマコン・チームは、医療とエコロジーの芸術的実践の社会的有用性について着目し、これをさまざまな形で実践し、協働の領域を広げることを通じて、芸術表現の新しい発展と受容、および応用の可能性を模索しています。

本展覧会に参加するメンバーでは、アレルギーと感染症、環境と身体の関係づくりに関心をもち、ナント大学付属病院の研究者の協力を得て、プロジェクト「生きる、よりよく生きる?」(“Vivre ou vivre mieux?”) や展覧会「L’UN L’AUTRE」を提案し、また同機関や他の医療系期間のバックアップを得て、アレルギーの子供の生活にスポットライトを当て、制約のある中での彼らのより豊かな環境とのコンタクトについて考えさせるアニメーション「Atolyne」を製作しているジェレミー・セガール(Jérémy Ségard)がいます。ヨーゼフ・ボイスに表現活動にかんする強い影響を受けるこのアーティストは、芸術による社会的還元、あるいは芸術表現の社会的有用性を確信しながら、現代の我々の社会でもっともさしせまった問題の一つである移民問題を思わせるドローイングシリーズ「Western Point」を発表するなどの活動があります。

また本展覧会で、京都会場および大阪会場において170cm×200cmの大きな双子のドローイング「バベルの塔的細胞」(tour babélienne)を発表するフロリアン・ガデン(florian gadenne)は、植物・虫・菌類・土・石などからなる生物彫刻を得意とし、ありうべき、あるいはありえたかもしれない世界の調和を錬金術的思考で提案しようとします。そこではしばしば、現代の私たちを取り巻く世界観において当たり前と認識されているさまざまなヒエラルキーや人間中心的な認識を根底から揺さぶろうとします。この視点は、わたしたちがよりよくわたしたちの身体を生きる上で必要となる新しいエコロジーのための有効な視点を与えてくれるかもしれず興味深いと言えます。フロリアン・ガデンの最近の個展「モナド」(monades, Therdonne, France, 2017)では、

本展覧会でキュレータをつとめる大久保美紀(Miki Okubo)は、パリ第8大学および国立高等装飾学院(Ensad)でニューメディアを通じた自己表象、とりわけ親密な主題による芸術表現の社会的有用性にかんする研究を行ってきました。主著「可動的/流動的時代の自己表象」(“Exposition de soi à l’époque mobile/liquide”, Connaissances et Savoirs, 2017)では、ディヴァイスやプラットフォームを通じた現代の自己表現/自己演出について「ライティング」「ファッション」「ゲーム」など異なる切り口をとりながら、今日のメディア環境や社会において私たちがどのように自らの身体を認識し、享受し、生き続けるかを思考する。近年はとりわけ、現代の行き過ぎた清潔概念が脅迫的になることにより私たちの身体が置かれている危機的状況や、社会的・経済的・政治的戦略によって無意識に信じさせられているさまざまなモラルやヒエラルキー、「コモン・センス」に疑問を投げかけながら、作家と協働しプロジェクト企画や展覧会企画、執筆を行う。

紹介した展覧会や作品について、リンクを掲載します。

Vivre ou vivre mieux? (カタログダウンロード可能、日仏バイリンガル)
L’UN L’AUTRE カタログダウンロード (“télécharger”でダウンロード)
展覧会 L’UN L’AUTRE についての記事
LOTOKORO website (Jérémy Segardが活動の基盤とするアソシエーション)
monades (florian gadenneの展覧会ヴュー)
展覧会 “monades” についての日本語記事
mikiokubo art-écriture-esthétique (大久保美紀のウェブサイト)
“Exposition de soi à l’époque mobile/liquide” (「可動的/流動的時代の自己表象」)