ファルマコンの再生:生の祭壇 Pharmakon’s Rebirth – Alter of lives

会場:アトリエみつしま
会期:2023年11月2日(金) – 2023年11月19日(日)11時 – 18時
※月曜休み、オープニング当日(11月2日)のみ15時開館
※作家在廊予定:堀園実(11/2, 3, 4,19), フロリアン・ガデン(11/2, 4,19)

関連イベント
11月4日(土)
14時―16時 特別レクチャー (吉岡洋、聞き手:大久保美紀)
予約不要、入場無料(展覧会チケット要)

11月4日(土)
16時―19時 オープニングレセプション(出展作家在廊)
予約不要、入場無料(展覧会チケット要)

※問い合わせ:http://mrexhibition.net/pharmakon/?p=621 にコメント、あるいは、大久保美紀(mk_(@)iamas.ac.jp) まで。

キュレータ:大久保美紀
出展作家:フロリアン・ガデン、堀園実
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展覧会について

展覧会「ファルマコン」は、キュレータ・大久保 美紀(任意団体art-sensibilisation代表)が日仏の作家とともに医療・エコロジーの領域における芸術的アプローチの模索に取り組んできた展覧会であり、2017年に第一回「ファルマコン:医療とエコロジーのアートのための芸術的感化」(京都・大阪)を開催して以来、コロナ禍も止むことなく開催を続け、今年で7回目となります。本展の出展作家であるフロリアン・ガデンと堀 園実は、このテーマについて一貫した取り組みを続けてきました。彼らはこれまで、絵画・彫刻・写真・インスタレーションという異なる表現に挑戦し、エコロジーの領域における芸術的なアプローチを模索しながら、自身の表現を磨いてきました。

「ファルマコン」(Pharmakon=φάρμακον, Greek)はギリシャ語で「毒」と「薬」を同時に意味する両義的な言葉です。プラトンは『パイドロス』という対話篇において、私たちの記憶を外部化し、大量の文字情報を正確に保持することを可能にする「書き言葉」が、実は身体技法としての生きた記憶の動態を喪失させると指摘しました。「ファルマコン」の両義的な性質は、フランスの哲学者ジャック・デリダやベルナール・スティグレールらによって現代的な文脈で再考されるようになります。

「ファルマコン」的な本質的両義性への不理解・不寛容は、現代社会における諸問題に現れています。たとえば、行き過ぎた健康志向や潔癖傾向、マイノリティに対する不理解、中庸を認めない二分法的議論の不毛さ、そして人間中心主義を脱することのないエコロジーの取り組み…。コロナ禍は、こうした問題をとりわけ顕在化したに過ぎず、私たちはずっと以前からこうした状況に取り巻かれていたと言えるでしょう。「ファルマコン」を再考すること、つまり、世界の両義的な性質を認めることは、私たちの思考を解放し、このような問題の打開へ私たちを導いてくれるに違いありません。

「生の祭壇」とは、あらゆる生命に捧げられる表現のことです。人間中心主義に基づき文明を築き上げてきた人類が、一つの「生」として自らを思考することができるなら、それは「ファルマコン」的ものを再生し、そのものアンビバレントである「生」を受け入れることによってこそ成し遂げられるでしょう。本展覧会が、そのための布石となるよう願っています。

 

出展作家について

フロリアン・ガデン Florian Gadenne

https://floriangadenne.com

1987年パリ生まれ、ナント・サン=ナゼール高等美術学校(Ecole Supérieure des Beaux Arts de Nantes Métropole )修了、岐阜在住。2015年、「PARIS ARTISTES」入選(2015)。2017年よりファルマコン展に参加し、生命の二元性に焦点を当てた巨大なドローイング・デュオ、《バベルの塔的細胞》および《クローン》や、二元論的思考を乗り越え、生命の複雑なダイアローグに焦点を当てる《œ》を発表。フランス国立食品農業研究所所長フランシス・マルタン氏の協力を得て実現した《arbre-monde》(世界樹)では種間の複雑な関係性とエネルギーのサイクルを可視化する。2021年以降、ありふれた日常に現れる奇妙な風景を描く詩的なシリーズ《Visions lyriques》に取り組む。

受賞歴
現代アートフェスティバル「Paris Artistes」入賞/フランス
第10回500m美術館賞 大賞/北海道
FACE 2023 (Frontier Artists Contest Exhibition) 入賞/東京

清流の国ぎふ芸術祭 Art Award in the CUBE 2023 入賞/岐阜

 

堀 園実 Sonomi Hori

https://www.horisonomi.com

1985年生まれ、沖縄県立芸術大学大学院修了、彫刻家。静岡県の高校で非常勤講師として芸術を教える。2016年、文化庁新進芸術家海外研修制度によって、フランス・パリで研修滞在。主な個展に、「なみうちぎわの協和音2018, 2019」(Emerging2018/トーキョーアーツアンドスペース本郷、東京、2018)(めぐるりアート2019/静岡県立美術館、2019)、「Developing」(CCC、静岡、2021)、グループ展に「ファルマコン–医療とエコロジーのアートによる芸術的感化」(ターミナル京都、CAS、京都・大阪、2017)など。身近なものや風景の構成要素を型取り、脆い粘土に置き換え、彫刻として再現する。それらは現実の似姿でありながらある種のズレを表現し、その余白にあるものや歪みについて思索する。金属や漆喰、石膏など多様な素材を用いた表現に取り組む。

受賞歴
トーキョーワンダーウォール2016 入選作品展/東京/ 2016
沖縄県立芸術大学卒業 西銘順治賞 /沖縄/2007
アート・ミーツ・アーキテクチャー コンペティション2006 最優秀賞 作品設置 「息を止めて聞こえるリズム」/東京/2005

大久保美紀(キュレータ)

1984年札幌生まれ。情報科学芸術大学院大学[IAMAS]教員。芸術博士(美学・芸術学)。京都大学大学院在学中よりパリ第8大学へ留学、学位取得後は同学の講師として2021年までフランスに滞在し、芸術批評・研究活動の傍ら、キュレータとして活動する。2017年以来、関西地方を中心にファルマコン展を企画・実施。岐阜県美術館にて2023年12月24日まで開催中の「IAMAS ARTIST FILE #09〈方法主義芸術―規則・解釈・(反)身体〉」をキュレーション。作家(florian gadenne + miki okubo)としても活動し、第10回500M美術鑑賞グランプリ受賞(2023)、清流の国ぎふ芸術祭Art Award In the CUBE 2023入選(2023)。主著に『Exposition de soi à l’époque mobile /liquide』(2017)など。

特別レクチャー
吉岡洋

1956年京都生まれ。京都芸術大学文明哲学研究所、教授。美学者。主著に『情報と生命:脳・コンピュータ・宇宙』(1993)、『〈思想〉の現在形:複雑系・電脳空間・アフォーダンス』(1997)など。「京都ビエンナーレ2003」、「岐阜おおがきビエンナーレ2006」総合ディレクター。映像インスタレーション作品「BEACON」メンバー。ファルマコン展のアドバイザーとして、展覧会の軌跡を見守る。

ファルマコン展の歩み
医療とエコロジーのアートの芸術的感化(2017.12, 京都・大阪)
アート×毒×身体の不協的調和(2018.11, 京都)
生命のダイアローグ (2019.12, 神戸)
連鎖反応(2020.12, 京都)
死生への捧げもの(2021.12, 京都)
新生への捧げもの(2022.5-6, 京都)

任意団体 「art-sensibilisation」
「art-sensibilisation」 (アートサンシビリザシオン)は、フランス語で「芸術―感化」を意味します。エコロジーおよび医療の領域において芸術的アプローチを模索する作り手を支援し、アートによる問題提起・新たな視点の提示のために、展覧会・アートイベント・カンファレンスなどの企画を行います。活動に関心のある方は気軽にご連絡ください。

クリスマスは、ファイナル・ファルマコン2022‼️

「ファルマコン2022 新生への捧げもの」オンラインレクチャー最終回のお知らせ!

お待たせいたしました。長らく延期していた展覧会「ファルマコン:新生への捧げもの」オンラインレクチャーシリーズの最終回を12月23日お昼よりzoom配信いたします。奮ってご参加ください。

クリスマスはファイナル・ファルマコン2022

2022年も暮れとなりました。2022年5月28日から6月19日、京都のThe Terminal KYOTOにて開催された展覧会「ファルマコン:新生への捧げもの」を盛り上げるため5月から出展作家の皆様にご出演いただきつつ展覧会最終日まで続けてきたオンラインレクチャーシリーズ(Youtubeチャンネル「展覧会ファルマコン」)全8回。当初は展覧会終了後の7月に予定していた最終回(第9回)でしたが、未開催のまま年の瀬になってしまいました。
ついに決まりました、ファルマコン2022のファイナル・レクチャー詳細は…

日時:2022年12月23日12:00-13:30(ZOOM配信)
出演:吉岡洋(アドバイザ), 大久保美紀(キュレータ)
テーマ:総括 「新生へのアートプラクティス」
参加URL:https://us06web.zoom.us/j/81816197976?pwd=bHljSzNpS3dNank1bVo2TmRSSEhVUT09
ミーティングID: 818 1619 7976 パスコード: 54B7G3

総括回の聞きどころ
パンデミック、ウイルス、マスク、ワクチンといった話題は人々を痛々しい仕方で分断させている。それらに関する意見や方針の違いによって、それまで仲の良かった友人や家族、親戚などの間に亀裂が生じてしまった例も少なくない。そうした事態を避けようとすれば、これらの話題をタブーをしなければならないが、それもまた抑圧的な状況である。現代社会を最も深刻に毀損しているのは、こうした亀裂と分断へと誘導する力である。この力に抵抗する希望が、本展覧会のテーマである「新生」という語に託されたひとつの意味であった。
オンライン・レクチャー総括回では、そうした希望を新しいエコロジカルな世界観を語ることの中に求めたい。それは宇宙の中での人間の位置について、新しい理解へと到達する試みである。人間中心主義もちろん、動物中心の生命観をも捨て去って、植物や微生物に定位した生命理解の可能性について考える。エマヌエーレ・コッチャの「植物の生の哲学」や、単に「東洋的」というステレオタイプでは捉えきれない道教の生命観にも言及しつつ、バイオテクノロジーや人工知能によって変貌するこの世界における、新たな生のあり方を探ってみたい。

展覧会「ファルマコン:新生への捧げもの」について
本展覧会は、パンデミックに翻弄され日常を犠牲にしてきた世界が、ウイルスという不可視の敵の撲滅という大義名分のもと、他者を警戒し合い、経済格差が拡大され、現世への執着のあまりに死者への配慮を失ってきた状況を危機的に捉える。〈薬〉と〈毒〉同時に意味する「ファルマコン」は世界の本質を両義性に見出した。この概念を鍵に、過去と未来・この世とあの世をつなぐものとしての芸術表現を模索し、「新生」への捧げものを行う異なるアプローチ(8組11名のアーティスト)がThe Terminal KYOTO(京都)に集った。

これまでのレクチャーはこちら
→ Youtubeチャンネル「展覧会ファルマコン」https://www.youtube.com/@user-mw5vt7zy3n/videos

NEW! オンラインレクチャー総括回をアップしました!
https://youtu.be/EdeQ9p9s6-U


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お知らせ★オンラインレクチャーシリーズ:思考のワークショップ「総括回」延期

★お知らせ★

2022年7月15日に予定されていた、展覧会「ファルマコン:新生への捧げもの」関連イベント「オンラインレクチャーシリーズ:思考のワークショップ総括回」を主催者の都合により、後日に変更することになりました。
ご予定等をご調整いただいていた参加希望者の皆様、ご迷惑をお掛けして誠に申し訳ありません。

新しい日程は、決まりましたらこちらで告知させていただきます。ズーム参加でお申し込みの方にはメールでもお知らせいたします。

6月19日18時まで☆The Terminal KYOTOで開催中!

展覧会「ファルマコン 新生への捧げもの」開催中。会期中休みなし、6月19日まで9時ー18時までThe Terminal KYOTO会場ウェブサイト)にてご覧いただけます。

展覧会の楽しみ方:
♫ 会場に到着すると、
 フロリアン・ガデンさんの《oe》が皆様をお出迎えします!2メートル×4メートルの巨大な生物彫刻は必見です。
♫ 玄関を入ったところで見上げてください。
 西脇直毅さんの長大作品《意識的な呼吸》がなんと皆さんの頭上に!!!本作品初披露、かなり近接でご覧いただけます。
♫ 喫茶スペースを超えてお庭の方までお進みください!
 ジェレミー・セガールがフランスから送ってきたパンドラの箱から…何かが漏れ出しています!
♫ 物販コーナーもぜひご覧ください!
 小林玉雨さんにデザインいただいたファルマコン連鎖/反応(PCR)展カタログ販売中です!

♫ 二階への階段をお気を付けて登ってください
 入江早耶さんの百体の消しカス魔像が勢揃いしています。疫病終息の祈りをお見逃しなく!
♫ 窓からの後光に負けじと君臨しているのは、
 チラシやプログラムの表紙でお馴染みの《arbre-monde》(フロリアン・ガデンさん)!どうぞ間近でご覧ください。
♫ 二階には少し隠れ家のようなスペースが。
 ベルリンからご参加の梶村昌世さんの影絵絵本は暗闇を懐中電灯で照らしながら物語を明るみに出す仕組みです!
♫ 幾何学的・物理学的着想が溢れる福島陽子さんの世界は、五連の砂時計、三連の布絵画、彫刻群… 充実したインスタレーションをたっぷりお楽しみください。

♫ 地下室もお見逃しなく!地下防空壕は二つあります。
 一番奥までお進みいただくと、堀 園実さんの粘土による浜辺の風景《なみうちぎわの協和音》があります。
♫ 手前の防空壕には、《母音廻し、または遠隔音響合成のための五芒星》。iPadを手に取っていただくと部屋の中心に置かれて鈴と木柾を奏でる奇妙な人形の周りを動き回るカラフルなオブジェクトをご覧いただけます。この部屋の様子は会期中絶えずライブ配信されています。

さて、どうかお見逃しのないよう、ご高覧いただけますのを楽しみにしております!

★★★出展作品『母音廻し、または遠隔音響合成のための五芒星』(/Passing vowels or Pentagram for remote sound synthesis by 三輪眞弘+前田真二郎+佐近田展康)は、遠隔地で作品にご参加いただけます。以下のサイトから、ご自身のPCで遠隔音響合成いただくためのソフトウェアをダウンロードしてください!未曾有の〈配信芸術〉にご参加ください!!!
ソフトウェアダウンロードはこちら:http://formantbros.jp/news/passingvowelssoftware/?fbclid=IwAR0BVIfd9OnblbrM1hzYiUJyG4EZJu-_6M4CXNLLwPJtXAys5og5gasZj4k

★オンラインレクチャーシリーズ、残すところ、6月11日14時ー、6月19日14時ー(現地、YouTube配信あり)です。Zoom参加をご希望の方は、参加申込フォームよりお願いいたします。現地開催の19日は、お近くの方は奮ってお越しください。三輪眞弘さん・前田真二郎さんをゲストにお迎えします。

★クロージングパーティーを最終日16時よりささやかながら行う予定です。お近くの方はお越しください。

「新生への捧げもの」5月28日より開幕!毒と薬をともに意味することば「ファルマコン」には、捧げものという意味もある。「捧げる」とは所有を諦め、過去を抱きしめ未来に想いを託し、死者やこれから生まれる者たちを心から配慮すること。そのような関係を通じてこそ、私たちの生は意味を持ち、私たちは幸せに生きられる。アートは、私たちをそこに導く道標である。

会場:The Terminal KYOTO
〒600-8445 京都府京都市下京区岩戸山町424
日時:2022年5月28日―6月19日 9時―18時入場料:300 円(障害者手帳をお持ちの方とその付き添いの方、高校生以下無料)
主催:art-sensibilisation,協賛:京都芸術大学文明哲学研究所
協力:The Terminal KYOTO、ギャルリー宮脇
助成:公益財団法人朝日新聞文化財団
キュレーター:大久保美紀
アドバイザー:吉岡洋
インストーラー:池田精堂
出展作家:入江早耶、大久保美紀、梶村昌世+福島陽子、フロリアン・ガデン、ジェレミー・セガール、西脇直毅、堀園実、三輪眞弘+前田真二郎+佐近田展康

※展覧会に出展されている展示作品は一部を除いて販売をしています。個別作品について価格等の詳細はスタッフにお尋ねください。

※会場一階には物販コーナーを設置しています。出展作家作品、作品集、展覧会カタログ、ハガキ、ポスター等もございますのでぜひご覧ください。詳細をご希望の方はお問い合わせください。

開幕迫る!!!5月28日スタート

「新生への捧げもの」5月28日より開幕!

毒と薬をともに意味することば「ファルマコン」には、捧げものという意味もある。「捧げる」とは所有を諦め、過去を抱きしめ未来に想いを託し、死者やこれから生まれる者たちを心から配慮すること。そのような関係を通じてこそ、私たちの生は意味を持ち、私たちは幸せに生きられる。アートは、私たちをそこに導く道標である。

会場:The Terminal KYOTO  〒600-8445 京都府京都市下京区岩戸山町424
日時:2022年5月28日―6月19日 9時―18時
入場料:300 円(障害者手帳をお持ちの方とその付き添いの方、高校生以下無料)
主催:art-sensibilisation,協賛:京都芸術大学文明哲学研究所協力:The Terminal KYOTO、ギャルリー宮脇助成:公益財団法人朝日新聞文化財団キュレーター:大久保美紀
アドバイザー:吉岡洋
インストーラー:池田精堂
出展作家:入江早耶、大久保美紀、梶村昌世+福島陽子、フロリアン・ガデン、ジェレミー・セガール、西脇直毅、堀園実、三輪眞弘+前田真二郎+佐近田展康

出展作品『母音廻し、または遠隔音響合成のための五芒星』(/Passing vowels or Pentagram for remote sound synthesis by 三輪眞弘+前田真二郎+佐近田展康)は、遠隔地で鑑賞いただけます。以下のサイトから、ご自身のPCで遠隔音響合成いただくためのソフトウェアをダウンロードできるようになります!未曾有の〈配信芸術〉にご参加ください!!!
LINK:IAMAS Time-Based Media Project

オンラインレクチャーシリーズ:思考のワークショップ

展覧会「ファルマコン:新生への捧げもの」の開幕(2022年5月28日@The Terminal KYOTO)に先立ち、5月7日より、シリーズ:思考のワークショップをズーム配信します。ワークショップでは、毎回、展覧会出展作家をお招きし、作品コンセプトや制作についてのお話をお伺いします。また、初回と最終回は、本展覧会アドバイザーの吉岡洋とキュレータの大久保美紀が展覧会の見どころやテーマの解説を行います。展覧会オープニング(5月28日)とクロージング(6月19日)には展覧会会場であるThe Terminal KYOTOでの開催とyoutube配信を企画しておりますのでお近くの方は是非お越しください。ワークショップにご参加いただいた方にはアンケートの回答をお願いしておりますので、ご協力よろしくお願いいたします。参加希望の方は、下記のQRコードより参加申請フォームにアクセスを願いします。
ご質問等は大久保美紀(garcone_mk(@)yahoo.co.jp)までお問合せください。

5月7日(土) 14 :00 – 15 :30
「生きづらさの底にあるものは何か?」
出演:吉岡洋・大久保美紀

5月14日(土) 14 :00 – 15 :30
「ミクロスコピック・アナロジー:œからarbre-mondeへ」
ゲスト:フロリアン・ガデン  聞き手:大久保美紀

5月21日(土) 14 :00 – 15 :30
「聖なるものの再臨」
ゲスト:入江早耶  聞き手:吉岡洋・大久保美紀

5月28日(土) 14 :00 – 15 :30. @The Terminal KYOTO
「into the viod : ボイドへの招待」
ゲスト:梶村昌世・福島陽子  司会:吉岡洋・大久保美紀

5月29日(日) 14 :00 – 15 :30
「渚にて」
ゲスト:堀園実  聞き手:吉岡洋・大久保美紀

6月4日(土) 14 :00 – 15 :30
「無限増殖するネコ宇宙」:西脇直毅の世界
ゲスト:西脇直毅(声)  聞き手:吉岡洋

6月11日(土) 14 :00 – 15 :30
「医療とエコロジー」
ゲスト:ジェレミー・セガールさん  聞き手:大久保美紀

6月19日(日) 14 :00 – 15 :30 @The Terminal KYOTO
「テクノロジーへの応答、奉納としてのアート」
ゲスト:三輪眞弘・前田真二郎  司会:吉岡洋・大久保美紀

7月15日(土) 14 :00 – 15 :30
総括 「新生へのアート・プラクティス」
出演:吉岡洋・大久保美紀
←参加申込フォームはこちらからお願いします。
(https://forms.gle/q1vvgQRTZuz9WDUn8)

「新生への捧げもの」5月28日より開幕!

「ファルマコン 新生への捧げもの」

毒と薬をともに意味することば「ファルマコン」には、捧げものという意味もある。「捧げる」とは所有を諦め、過去を抱きしめ未来に想いを託し、死者やこれから生まれる者たちを心から配慮すること。そのような関係を通じてこそ、私たちの生は意味を持ち、私たちは幸せに生きられる。アートは、私たちをそこに導く道標である。

会場:The Terminal KYOTO  〒600-8445 京都府京都市下京区岩戸山町424
日時:2022年5月28日―6月19日 9時―18時
入場料:300 円(障害者手帳をお持ちの方とその付き添いの方、高校生以下無料)
主催:art-sensibilisation,
協賛:京都芸術大学文明哲学研究所
協力:The Terminal KYOTO、ギャルリー宮脇
助成:公益財団法人朝日新聞文化財団

キュレーター:大久保美紀
アドバイザー:吉岡洋
インストーラー:池田精堂
出展作家:入江早耶、大久保美紀、梶村昌世+福島陽子、フロリアン・ガデン、ジェレミー・セガール、西脇直毅、堀園実、三輪眞弘+前田真二郎+佐近田展康

展覧会について
私たちの惑星は、今なお混乱の最中にあるのだろうか?パンデミックは、マスメディアやインターネット上で不安や恐怖を拡散するインフォデミックを引き起こし、私たちは日常生活のあらゆる点で、なるほど深刻な犠牲を払いつづけている。ウイルスという不可視の敵の撲滅という大義名分のもとに横行する非科学的な施策や政策は、経済破綻と格差社会の深刻化を招き、翻って現行の社会システムの脆弱さを暴露したにも関わらず、私たちは、他者そのものが忌み嫌うべき病原体であるかのような洗脳を受け入れ、互いに連帯して助け合うどころか、互いを警戒して制裁し合う監視社会の強化に自ら加担してしまっている。所有に基づく現行の資本主義の行き詰まりや、民主主義の欺瞞が叫ばれて久しいにも関わらず、そのような問題を「積極的に思考する」ということに関して私たちが去勢されている現状にもあまりに無自覚ではないだろうか。
犠牲の深刻さを最も象徴的に示すのは、人間が人間であるために最も大切な死者への尊敬の表現や、集団的礼拝を含む儀式が無力化されたことである。死者を思いやり、これから生まれてくる者に大切なものを投げかける行為は、つまり「捧げもの」のことである。「捧げもの」の存在しない、つまり、今現世を生きていることのみに執着し、死者たちへの配慮も、未来に託す希望もない世界に広がるのは、さぞ絶望的で不毛な風景だろう。
だが、私たちはなお幸せに生きられる。あまりに大きな犠牲を乗り越え、新しい生を模索する努力をすることができる。私たちの生が意味を持つのは、過去を思いやり未来の人々に希望を託す、その関係を通じてこそなのだ。そして、アートは、そうしたつながりを感じさせる手がかりとなる。物事の本質的両面性に着目する「ファルマコン」という言葉には、一見相反する「薬」と「毒」という意味に加え、「生贄(捧げもの)」という意味がある。本展覧会では、異なる芸術的アプローチを通じて、新たな生を積極的に思考する試みを提案する。
(キュレータ 大久保美紀)

展覧会ファルマコン2021-死生への捧げもの-

クリスマスは、みつしまへ!

展覧会ファルマコン2021 「死生への捧げもの」

プレスリリースできました! ダウンロードはコチラ→Pharmakon21_presse

会場:アトリエみつしま 603-8215 京都市北区紫野下門前町44
   (地下鉄烏丸線「北大路」駅から徒歩15分、市バス「大徳寺前」から徒歩5分)
日時:2021年12月21日〜12月25日 11時〜18時
入場料:500円 (障害者手帳をお持ちの方と付き添いの方無料、高校生以下無料)
*ご来場いただいた方には、毒の研究冊子『ポワゾン・ルージュ』と吉岡洋直感断想集『ミニマ・エステティカ』をプレゼント!
主催:art-sensibilisation
協力:アトリエみつしま、ギャルリー宮脇
文化庁「Art for the future !」補助対象事業

キュレーター:大久保美紀
出展作家:入江早耶、フロリアン・ガデン、ジェレミー・セガール、西脇直毅、堀園実、三輪眞弘+前田真二郎

関連イベント:
思考のワークショップ:特別レクチャー
12月22日 14時―16時「〈恩寵〉をめぐって」(出演:吉岡洋・加藤有希子)
12月23日 14時−16時「資本主義のファルマコン的読解」(出演:吉岡洋)(ディスカッサント:梶村昌世、福島陽子、フロリアン・ガデン、大久保美紀(通訳))

予約不要。どなたでもご参加いただけます。
ズーム参加をご希望の方は、大久保美紀(mimi.okb(@)Gmail)までご連絡ください。

NEW!!!!!! Youtube配信もあります!!!

「死生への捧げもの」展 思考のワークショップ:特別レクチャー1
「〈恩寵〉をめぐって」
出演者:吉岡洋、加藤有希子
日時:2021年12月22日 14時~
「死生への捧げもの」展 思考のワークショップ:特別レクチャー2
「資本主義のファルマコン的読解」
出演者:吉岡洋ほか
日時:2021年12月23日 14時~

12月22日16時―18時 オープニングパーティー
12月25日16時―18時 クロージングパーティー

展覧会について:

「コロナ禍」- 2020年に始まったエピデミックは、人類を翻弄する未曾有の大厄災となり、人間世界を変貌させ、その日常生活に深刻な犠牲を強い続ける。非常時の権力はメディアと共謀し、人々の恐怖を煽り、不可視の「敵」を遮断するという大義名分のため、社会・経済・文化・宗教、あらゆる領域にその支配を及す。富める者はますます富み、貧しい者はさらに貧しくなる。貧富の差は拡大し、少数派が細分化されて弱体化する。

COVID-19によるエピデミックでは、戦争・災害・かつてのエピデミックが人類史上一度も塞き止めることのできなかった人々の死者への尊敬の表現と神への集団的礼拝を含む儀式を無力化した。葬儀はオンライン化され、死者に最後の言葉をかける機会も、死者の亡骸と時間を共有する瞬間も失われる。人々は集うことを恐れ、他者を警戒する。我々が真に恐れているのは、ウイルス感染そのものより、風評被害に遭うことや、感染に関与することによって社会から糾弾され居場所を失うこと、あるいは、親族にも会えない孤独死の末に、ビニールの納体袋に詰め込まれて見知らぬ人の手によってあたかも何か恥ずべき存在として沈黙のなか葬られることである。あるいはまた、間もなく起こるかもしれない世界の激変に対する漠然とした不安が生み出した精神的高揚に由来する奇妙な祝祭的な盛り上がりが、逆説的にも世界を包み込みつつある。

「コロナ禍」は、新たなエコロジーの創設と共有が今日の我々の切迫した課題であることを明らかにする。フランスの精神科医、フェリックス・ガタリは『三つのエコロジー』において環境・社会・精神という三つのエコロジー(ガタリはこれをエコロジー+フィロソフィーの概念である「エコゾフィー」と名付ける)の必要性を説いた。広大な中国の市場から突如伝播したとされるウイルスの人類におけるエピデミック化を巡って、環境のエコロジーが問い直されるのは言うまでもないが、それが暴き出した脆弱で時代遅れの資本主義社会経済システムを根本から再考することなしに問題は解決しえない。さらには我々個人の精神のレベルで今後の世界におけるより良い生き方が共有されることなくして、事態の収束もその後の世界も見えてこない。私たちは抜本的な方法で生き方そのものを見直すべき局面に立っている。

本展覧会は、物事の本質的な両義的側面に着目する「ファルマコン」(薬=毒=生贄/犠牲)の概念を手がかりに、今日の私たちが無視することのできない状況としての「コロナ禍」(そして、その後の世界としての「ポストコロナ」)の世界をいかに生きて死ぬことができるのか、芸術を通じたアプローチによって導きうる新たなエコロジー哲学とはいかなる思想であるかを問う。

大久保美紀

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PCR展覧会プログラム+PV

展覧会「ファルマコン 連鎖/反応」(PCR)プログラムができました。PDFファイルは以下よりダウンロードしていただけます。
download PCR_program_1129



また、PV動画ができました。ぜひご覧ください。©K.Tamura

「ファルマコン連鎖/反応」(PCR展)の出品作家

展覧会の見どころ、出品作家
展覧会「ファルマコン 連鎖/反応」には、日仏より国際的に活躍するアーティスト11名が作品を発表します。この展覧会のための新作、コロナ禍の生活をつうじて生まれた作品、あたかもこの世界状況を予見していたかのような2019年以前制作の作品が、京都のギャラリー・アトリエみつしまに一挙に集う、みごたえたっぷりの展覧会です。
フランスからは、現状をシニカルなユーモアで表現するホルン奏者・ヌードモデルのエルイーズ・イルベール、暗室でご覧いただく注目の作品《chiasme》や巨大ドローイング《œ》を描いたフロリアン・ガデン、衛生概念をエコロジーの哲学で読み解くジェレミー・セガールが参加します。また、フランスを拠点に国際的に活躍しながら日本を見つめ直す古市牧子、命のメカニズムへの関心を独特な世界観で表現する福島陽子、そしてキュレータの大久保美紀が現状について再考します。
日本からは、消しゴムの消しカスから驚くべき細密彫刻を作り上げる入江早耶が必見の新作《青面金剛困籠奈ダスト》を発表します。また、磁性流体による彫刻で知られるメディアアーティストの児玉幸子が手がけたライトアート作品《雲の路》と色彩論の専門家・美術史家の加藤有希子による小説が共鳴します。気鋭の若手画家・谷原菜摘子がコロナ禍の生活を通じて描いたベルベット絵画《星を頂戴》とドローイング新作を発表、素材を探求し斬新な空間彫刻を試みてきた堀園実が新作の漆喰彫刻を発表します。

フロリアン・ガデン/Florian Gadenne
1986年生まれ、ナント美術大学大学院終了、パリ郊外在住美術家。2015年、「PARIS ARTISTES」入選。2018年、写真家松田有加里とのデュオ展「orbite elliptique」(滋賀、galleryサラ)。ファルマコン展には2017年から継続して参加。微生物叢と地球規模のミクロ・マクロの観点を行き来しながら、西欧中心的思考や人間の視点による偏ったエコロジーを批判し、アニミズムや錬金術の思想に影響を受けたコンセプトを展開する。新作の《oromitose》、《chiasme》および生命のダイアローグを描きこんだ巨大ドローイング《œ》を展示する。

chiasme, florian gadenne, 2020

oe, florian gadenne, 2019

oromitose, florian gadenne, 2020

古市牧子/Makiko Furuichi
1987年生まれ、美術家。フランス・ナント美術大学院終了、ナント市を拠点に国際的に活躍。「ブドウの時代」(L’Âge de Raison、カナダ、2019)、「ドリーム・ジャングル」(アミラルホテル、宿泊室全体をインスタレーション、ナント)、「KAKI Kukeko」(ファルクフー)、「手のひら泥棒」(WISH LESS gallery、東京)など個展多数。洗練された水彩画のテクニックと色彩で、独特な植物や人物を描く。ユーモアとシニカルな要素が混ざり合う表現は、絵画、彫刻、テキスタイル(コラボ)、ビデオ、インスタレーションと幅広い。在仏日本人としての視線から、日本社会を批判的に考察する作品も発表している。

Mains, Makiko Furuichi, 2020

堀園実/Sonomi Hori
1985年生まれ、沖縄県立芸術大学大学院終了、彫刻家。2016年、文化庁新栄芸術家海外研修制度によって、フランス・パリで研修滞在。主な展覧会に、「Emerging 2018 なみうちぎわの協和音」(トーキョーアーツアンドスペース本郷、東京、2018)や「ファルマコン–医療とエコロジーのアートによる芸術的感化」(ターミナル京都、CAS、京都・大阪、2017)など。身近なものや風景の構成要素を粘土で型取り、彫刻として再現する。それらは現実の似姿でありながらある種のズレを表現し、その余白にあるものや歪みについて思索する。金属や漆喰、石膏など多様な素材を用いた表現に取り組む。

エロイーズ・イルベール/Héloïse Hilbert
音楽家・ヌードモデル・ドローイング作家。日本とは比べ物にならないコロナ感染者数と死者を出したフランスで「ソーシャル・ディスタンス」と同じくらい普及したコロナ禍の新用語・「ジェスト・バリエール」 (防御のためのジェスチャー)をテーマとした風刺ドローイングシリーズを発表する。「ジェスト・バリエール」は今や社会の常識となり、すべての人にそれに基づいて行動するよう強いる。マスク着用、1メートル以上の距離、逐一の消毒とそのためのジェルを常に携帯。一体どこまでそのジェスチャーは適応されるべきなのだろうか。家族、恋人、友人との人間関係は変容しただろうか。一方で、感染を食い止めるために一般化した新たな習慣は、またしても人間のエゴイスティックな態度を露呈することになった。厳重な小分け包装に使う大量のプラスチック、道のいたるところに見られるようになった使い捨てマスク…。楽譜の裏紙に描かれたドローイングは連日SNSに投稿されている。全てのドローイングに日本語訳付き。

©Heloise Hilbert, Dessins

ジェレミー・セガール/Jérémy Segard
1983年生まれ、フランス・ナント美術大学大学院終了、ナント在住、美術家。ナント建築大学講師。ナント市大学病院(CHU)にてレジデンスを行う。医療とエコロジーの芸術的アプローチについて思考するアートアソシエーションLOTOKORO主宰者。「ファルマコン」の概念を基盤とした研究・実践活動の主要メンバーである。2014年より、病院レジデンスを通じて、身体と環境のテーマに取り組む。緑化地区と衛生概念についての研究を続けており、最近は自ら購入した一区画を利用して実験的時制環境づくりを行う。

谷原菜摘子/Natsuko Tanihara
1989生まれ、画家。2015年、絹谷幸二賞。2016年、VOCA奨励賞。2017年、五島記念文化賞新人賞を受賞し、一年間フランス・パリで研修滞在。2018年、京都市芸術新人賞受賞、同年東京・MEMにて個展「まつろわぬもの」開催。国際的に活躍中の若手画家として着目される。黒や赤のベルベットに油彩・アクリルなど精巧なテクニックで描き、リアリスティックな表現で人々の日常や社会に対して違和感を喚起し、ジェンダー、心理の闇、ある種の夜会的暴力などの主題について、しばしば画家自身がモデルと思われる人物をめぐる複雑なオーケストレーションを構成する。

星を頂戴, Natsuko Tanihara, 2020

入江早耶/Saya Irie
1983年生まれ、広島市立大学大学院芸術学研究科博士課程修了。2009年、岡本太郎現代芸術賞入選。2012年、第六回Shiseido egg賞受賞。個展に「見出されたかたち」(2013、東京)、「入江沙耶展・純真遺跡〜愛のラビリンス〜」など多数。「瀬戸内国際芸術祭」をはじめ多くのグループ展に参加。消しゴムでイメージを消してできた消しカスを練り上げて彫像し、立体作品を作るという独特のアプローチを通じて、日常品やありふれたイメージの内包する意味や本質を洗い出し、現代的解釈をにおいて再現する。本展覧会では、コロナ流行中の日常生活を通じて作家が関心を抱くこととなった疫病に関する研究の結果誕生した新作「青面金剛困籠奈ダスト」を発表する。

青面金剛困籠奈ダスト, Saya irie, 2020

加藤有希子×児玉幸子/Yukiko Kato×Sachiko Kodama
加藤有希子は、埼玉大学基盤教育研究センター准教授、作家。表象文化論、近現代美術史、色彩論研究者、単著に『新印象派主義のプラグマティズム』他。「現代社会における<毒>の重要性」研究メンバー。近年児玉幸子のアートについて研究し、目まぐるしく変貌するコロナ禍の世界を背景に、変わらない日常と突如突きつけられる非日常をアンティムに描いた短編小説「雲の路」に、児玉幸子の《雲の路》を登場させた。

児玉幸子は、日本を代表するメディアアーティスト、研究者、電気通信大学准教授。2000年より、磁性流体という独自の媒体を通じて作品を発表してきた。新たなメディアアートの表現は国際的に注目を浴びている。第五回文化庁メディア芸術祭デジタルアートインタラクティブ部門で大賞を受賞(2002)。今回展示予定の「雲の路」は、窓のような枠組みの隙間からのぞく光の色が次々と変化するライトインスタレーションで、児玉のライトアート作品の中でも貴重な作品である。今回は加藤有希子の小説の抜粋と併せて展示する。

雲の路, Sachiko Kodama, 2019

大久保美紀/Miki Okubo
1984年生まれ、京都大学大学院人間環境学研究科で現代アートの研究中、パリ第8大学へ留学し、そこで芸術修士号・博士号を取得。2012年以降パリ第8大学芸術学部講師。専門は美学・芸術学、とりわけ自己表象をする身体への関心から、2014年より医療における身体感覚と芸術的アプローチの可能性に関心を持ち、キュレーション活動を開始する。キュレータとしての展覧会に、「ファルマコン:医療とエコロジーのアートによる芸術的感化」(2017)、「ファルマコン:アート・毒・身体の不協的調和(2018)、「ファルマコン:生命のダイアローグ」(2019)など。医療の文脈におかれた身体のあり方や、薬の副作用やプラセボ効果、ホメオパシーをはじめとする代替医療について関心を持つ。

福島陽子/Yoko Fukushima
1976年生まれ、パリ在住。言語とは異なる多様なコミュニケーションのあり方に惹かれる。東洋医学や代替医療を通じてエネルギーの仕組みに関心を持ち、不可視の世界を読み解く鍵として、量子力学を表現手段の一つとして意識する。工芸、オートクチュール、ダンスなど、領域横断的表現を通じて、多様な素材を用いた繊細な作品によって独特の世界観を表してきた。本展覧会では、生と死・内と外・心と精神・光と闇など、世界を成り立たせる命のメカニズムを物質・非物質的観点から探求した一つの到達点として、三連砂時計《四次元を超えて》、そのコンセプトを描いたドローイング作品に加えて、オブジェとドローイングを中心とした数点を発表する。

Beyond the 4th dimension, Yoko Fukushima, 2020