会場:アトリエみつしま
会期:2023年11月2日(金) – 2023年11月19日(日)11時 – 18時
※月曜休み、オープニング当日(11月2日)のみ15時開館
※作家在廊予定:堀園実(11/2, 3, 4,19), フロリアン・ガデン(11/2, 4,19)
関連イベント
11月4日(土)
14時―16時 特別レクチャー (吉岡洋、聞き手:大久保美紀)
予約不要、入場無料(展覧会チケット要)
11月4日(土)
16時―19時 オープニングレセプション(出展作家在廊)
予約不要、入場無料(展覧会チケット要)
※問い合わせ:http://mrexhibition.net/pharmakon/?p=621 にコメント、あるいは、大久保美紀(mk_(@)iamas.ac.jp) まで。
キュレータ:大久保美紀
出展作家:フロリアン・ガデン、堀園実
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展覧会について
展覧会「ファルマコン」は、キュレータ・大久保 美紀(任意団体art-sensibilisation代表)が日仏の作家とともに医療・エコロジーの領域における芸術的アプローチの模索に取り組んできた展覧会であり、2017年に第一回「ファルマコン:医療とエコロジーのアートのための芸術的感化」(京都・大阪)を開催して以来、コロナ禍も止むことなく開催を続け、今年で7回目となります。本展の出展作家であるフロリアン・ガデンと堀 園実は、このテーマについて一貫した取り組みを続けてきました。彼らはこれまで、絵画・彫刻・写真・インスタレーションという異なる表現に挑戦し、エコロジーの領域における芸術的なアプローチを模索しながら、自身の表現を磨いてきました。
「ファルマコン」(Pharmakon=φάρμακον, Greek)はギリシャ語で「毒」と「薬」を同時に意味する両義的な言葉です。プラトンは『パイドロス』という対話篇において、私たちの記憶を外部化し、大量の文字情報を正確に保持することを可能にする「書き言葉」が、実は身体技法としての生きた記憶の動態を喪失させると指摘しました。「ファルマコン」の両義的な性質は、フランスの哲学者ジャック・デリダやベルナール・スティグレールらによって現代的な文脈で再考されるようになります。
「ファルマコン」的な本質的両義性への不理解・不寛容は、現代社会における諸問題に現れています。たとえば、行き過ぎた健康志向や潔癖傾向、マイノリティに対する不理解、中庸を認めない二分法的議論の不毛さ、そして人間中心主義を脱することのないエコロジーの取り組み…。コロナ禍は、こうした問題をとりわけ顕在化したに過ぎず、私たちはずっと以前からこうした状況に取り巻かれていたと言えるでしょう。「ファルマコン」を再考すること、つまり、世界の両義的な性質を認めることは、私たちの思考を解放し、このような問題の打開へ私たちを導いてくれるに違いありません。
「生の祭壇」とは、あらゆる生命に捧げられる表現のことです。人間中心主義に基づき文明を築き上げてきた人類が、一つの「生」として自らを思考することができるなら、それは「ファルマコン」的ものを再生し、そのものアンビバレントである「生」を受け入れることによってこそ成し遂げられるでしょう。本展覧会が、そのための布石となるよう願っています。
出展作家について
フロリアン・ガデン Florian Gadenne
1987年パリ生まれ、ナント・サン=ナゼール高等美術学校(Ecole Supérieure des Beaux Arts de Nantes Métropole )修了、岐阜在住。2015年、「PARIS ARTISTES」入選(2015)。2017年よりファルマコン展に参加し、生命の二元性に焦点を当てた巨大なドローイング・デュオ、《バベルの塔的細胞》および《クローン》や、二元論的思考を乗り越え、生命の複雑なダイアローグに焦点を当てる《œ》を発表。フランス国立食品農業研究所所長フランシス・マルタン氏の協力を得て実現した《arbre-monde》(世界樹)では種間の複雑な関係性とエネルギーのサイクルを可視化する。2021年以降、ありふれた日常に現れる奇妙な風景を描く詩的なシリーズ《Visions lyriques》に取り組む。
受賞歴
現代アートフェスティバル「Paris Artistes」入賞/フランス
第10回500m美術館賞 大賞/北海道
FACE 2023 (Frontier Artists Contest Exhibition) 入賞/東京
清流の国ぎふ芸術祭 Art Award in the CUBE 2023 入賞/岐阜
堀 園実 Sonomi Hori
1985年生まれ、沖縄県立芸術大学大学院修了、彫刻家。静岡県の高校で非常勤講師として芸術を教える。2016年、文化庁新進芸術家海外研修制度によって、フランス・パリで研修滞在。主な個展に、「なみうちぎわの協和音2018, 2019」(Emerging2018/トーキョーアーツアンドスペース本郷、東京、2018)(めぐるりアート2019/静岡県立美術館、2019)、「Developing」(CCC、静岡、2021)、グループ展に「ファルマコン–医療とエコロジーのアートによる芸術的感化」(ターミナル京都、CAS、京都・大阪、2017)など。身近なものや風景の構成要素を型取り、脆い粘土に置き換え、彫刻として再現する。それらは現実の似姿でありながらある種のズレを表現し、その余白にあるものや歪みについて思索する。金属や漆喰、石膏など多様な素材を用いた表現に取り組む。
受賞歴
トーキョーワンダーウォール2016 入選作品展/東京/ 2016
沖縄県立芸術大学卒業 西銘順治賞 /沖縄/2007
アート・ミーツ・アーキテクチャー コンペティション2006 最優秀賞 作品設置 「息を止めて聞こえるリズム」/東京/2005
大久保美紀(キュレータ)
1984年札幌生まれ。情報科学芸術大学院大学[IAMAS]教員。芸術博士(美学・芸術学)。京都大学大学院在学中よりパリ第8大学へ留学、学位取得後は同学の講師として2021年までフランスに滞在し、芸術批評・研究活動の傍ら、キュレータとして活動する。2017年以来、関西地方を中心にファルマコン展を企画・実施。岐阜県美術館にて2023年12月24日まで開催中の「IAMAS ARTIST FILE #09〈方法主義芸術―規則・解釈・(反)身体〉」をキュレーション。作家(florian gadenne + miki okubo)としても活動し、第10回500M美術鑑賞グランプリ受賞(2023)、清流の国ぎふ芸術祭Art Award In the CUBE 2023入選(2023)。主著に『Exposition de soi à l’époque mobile /liquide』(2017)など。
特別レクチャー
吉岡洋
1956年京都生まれ。京都芸術大学文明哲学研究所、教授。美学者。主著に『情報と生命:脳・コンピュータ・宇宙』(1993)、『〈思想〉の現在形:複雑系・電脳空間・アフォーダンス』(1997)など。「京都ビエンナーレ2003」、「岐阜おおがきビエンナーレ2006」総合ディレクター。映像インスタレーション作品「BEACON」メンバー。ファルマコン展のアドバイザーとして、展覧会の軌跡を見守る。
ファルマコン展の歩み
医療とエコロジーのアートの芸術的感化(2017.12, 京都・大阪)
アート×毒×身体の不協的調和(2018.11, 京都)
生命のダイアローグ (2019.12, 神戸)
連鎖反応(2020.12, 京都)
死生への捧げもの(2021.12, 京都)
新生への捧げもの(2022.5-6, 京都)
任意団体 「art-sensibilisation」
「art-sensibilisation」 (アートサンシビリザシオン)は、フランス語で「芸術―感化」を意味します。エコロジーおよび医療の領域において芸術的アプローチを模索する作り手を支援し、アートによる問題提起・新たな視点の提示のために、展覧会・アートイベント・カンファレンスなどの企画を行います。活動に関心のある方は気軽にご連絡ください。