florian gadenne/フロリアン・ガデン, drawing “oe” について 1

oe について 1

今日からは数回にわたって、フロリアン・ガデンの巨大ドローイング“oe”について、論じていこうと思う。

フロリアン・ガデンの公開制作の巨大ドローイングを昨年2018年12月に京都の想念庵でご覧くださった方々は思い出していただけるだろう。この作品は、昨年京都で展示された際 cellule babélienne 3 と題されていた2メートル×4メートルのドローイングである。想念庵では、制作中のゾーンの上と下の部分は巻物上に巻かれていて、全体をご覧にならなかった方もいらっしゃったかもしれない。実は今年、本作品は完成(予定)の形での世界初展示を予定している。展示は、神戸のギャラリー8で12月に展示となる予定だ。

この作品は、昨年のタイトルがcellule babélienne 3 であったように、バベルの塔神話にインスピレーションを受けており、構造の上半分は天に向かうバベルの塔の形状を基礎としている。cellule babélienneというのは、ガデンが2016年から取り組んでいるプロジェクトのタイトルであり、「バベルの塔的細胞」を意味する。プロジェクトといったのは、ドローイングのみならず、彫刻やインスタレーションなど(写真)バベルの塔的細胞のコンセプトを多様に展開して来たからである。せっかくの機会であるので、まずはcellule babélienne に通底するコンセプトについて書いておきたい。


聖書のバベルの塔神話におけるバベルの塔は、天へも辿り着けると過信した人間の驕った心の象徴として描かれ、天まで届く塔を築こうとバベルの塔の建設を進める人間たちの言語を、それに怒った神がバラバラにしてしまい、人間たちは相異なる言語を話し、彼らは意思疎通ができなくなって、バベルの塔建設は行き詰って、塔は崩壊してしまう。

ガデンの絵画「バベルの塔的細胞」では、その複雑で巨大な建造物は多様なミクロオーガニズムで構成されている。核のような構造を頂点に、複雑な構造の生物建築がその中にミトコンドリア、ゴルジ体、葉緑体などの多数の器官を含んでいる。構造の規定部分は、まるで根が張っているかのような細かな繊毛が見られ、描かれていない「地」を思わせる。また中間部には小胞から水泡のようなあるいは粒子のような構造が放り出されており、神経系の情報伝達とか細胞間の物質のやりとりとか、そのような営みを想像させる。絵画としての「バベルの塔的細胞」は1.5メートル×2メートルのものがこれまで二つ描かれており、不作めはちょうど一作目の上下をひっくり返したものでその名も「クローン」と名付けられている(写真)。

 人間は複数の言語を話すが(その数は時を経るにつれ減少している)、遺伝情報を翻訳する自然言語である遺伝のコードは、世界中どこでも共通だ。DNAに基づく遺伝子の言語は、古代の化学的なバベルの塔として姿を現したのだ。

          “alors que les hommes parlent plusieurs centaines de langues ( en diminution avec le temps), le code génétique, le langage de la nature qui traduit les gènes en protéines, est le même partout. le langage génétique, fondé sur l’arn et l’adn, a émergé de la babel chimique des temps archéens.”

                                         lynn margulis et dorion sagan – “l’univers bactériel” – p.57. ed.albin michel 1986.

バベルの塔は第一に言語の混乱の神話を象徴し、つまり唯一で絶対的な言語を失うことであり、それはある意味で崩壊の最終段階を表す。楽園を追放された人間は、あらゆる能力を手放さずに済んだ。彼らは、神の言語、つまり宇宙におけるあらゆる存在様態(無機物、植物、動物、人間)の言語を理解する能力を所有することになった。人間はしたがって言語の科学を操る。(略)神に向かって堂々と、自らの権力と意思を見せつける。この塔は、時空間を経て行われた人間と神のやりとり、つまり、人間の果てしない高慢心とそれを打ち負かした神の勝利を我々の目の前に明らかにしているのである。

la tour de babel symbolise avant tout un mythe: celui de la confusion des langues, donc la perte d’une langue primordiale unique et originelle. c’est en quelque sorte la dernière étape de la chute. chassé du paradis, l’homme a conservé sa toute-puissance: il connaît le langage des dieux, autrement dit, il possède la faculté de comprendre le langage de tous les états (minéral, végétal, animal, humain) de l’univers. l’homme maîtrise alors un science des mots et du verbe sans égale [..] c’est l’affirmation face à dieu, du pouvoir de l’homme, de sa volonté inépuisable. cette tour, qui défie le temps, l’espace, les hommes et dieu est l’expression d’un orgueil illimité, du moi triomphant”.

l’art visionnaire, michel random, p; 88-89. 1991.

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